ご案内
診察をして、姿勢反射障害や歩行障害のきざしに気づいたら、つまずいたり転んだりしないよう、杖を使うとか、手すりをつけるといった助言をします。
このように何らかの障害が出てきたらそれに対応する方法をくふうすればよいのです。
できれば患者さんもこの病気を正しく理解して、冷静にそうした判断をしてほしいものです。
この本もそうした意味でお役に立てたらと思って書きました。
一病自懐火という言葉がありますが、パーキンソン病もまさにそのとおりだと思います。
定期的に診察を受け、それまでの経過を報告することで、ほかの病気を早めに見つけられるという利点もあります。
またそう思わないとなかなか気持ちが前向きにならないのも事実です。
そうはいっても実際には動きが遅くなり、ものごとを以前のように上手にできないといったもどかしさはあることでしょう。
また、からだが重くてしかたがないと感じられることもあるでしょう。
その点は、主治医とよく話し合い、どのくらいまでよくなりたいといった希望をいってください。
そのとおりできないこともありますが、できる場合もあります。
実際、この病気は薬で厳しくねじ伏せるよりも、その存在を認めて、柔軟に対応していくほうが、症状もよくなるし、薬の副作用も最低限で抑えられるようです。
あるいは薬の効きめは八分目でがまんしてくださいといいましたが、生活のペースもそのあたりをめどに考えるということがあってもよいでしょう。
いろいろしたいことができないと思うより、できないと思っていたことができる、「いろいろはできないがひとつのことにじっくり取り組める、つまり鐙よりは所浬とおっしゃる態者さんもいます。
そうはいいながら、その患者さんは会社経賢署して好きなゴルフを楽しんでおられるのです。
「現代はみんながせかせかと動き回っていますが、そろそろゆっくりペースで生活するのもよいかもしれません」ともいっています。
アトランタ・オリンピックで聖火を掲げた米国の元ボクシング選手のモハメド・アリさんもパーキンソン病の患者さんです。
堂々とした雄姿は今も忘れられません。
彼のような前向きな姿勢こそが大切です。
「あれもできない、これもできない」と後ろ向きに考えるのではなく、「あれもやりたいこれもやりたい」と考え、医師や理学療法士などにも相談をしてください。
病気だからといって閉じこもったりせず、何ごとにも積極的に取り組むことは、患者さんの生活の質を高めます。
動作が思うにまかせないところはボランティアなど誰かに介助してもらうといった方法もあります。
最近は次つぎによい薬が開発されて、十年前には予測もつかなかったほどの成果を上げています。
現在も原因追究の研究が進められ、その手がかりになりそうなことがいろいろ見つかっています。
長生きするほど、よい薬が出てくるというのも実感するところです。
そう思って前向きに病気とつき合っていきましょう。
家族の方がもっとも心配されるのは、処方される薬の種類が多いことではないでしょうか。
「治療」の項で述べたように、病気の重症度とは関係ありません。
また副作用が心配でしょうが、むしろ効きすぎになり、副作用も少なくないパーキンソン病の薬をなだめすかしながら、薬の効果を上げ、副作用を抑えるために薬の種類がふえていると考えてください。
薬の種類は少ないにこしたことはありませんが、患者さんの症状を改善し、やわらげるためにはしかたがないことなのです。
この病気では家族をはじめ周囲の人の応援が症状のよし悪くし大きく影響します。
とくに家族が病気を正しく理解して適切な支援をすると、病気の悪化を抑えるばかりでなく、患者さんの暮らしがより充実したものになり、病気に負けない生活をしていくことができます。
薬が多すぎるから、ひとつくらいやめたほうがよいとか、医者を変えたほうがよいとか、患者さんにすすめる家族もいるようですが、そうしたことではありません。
家族の方はぜひ、この病気の治療法を理解し、患者さんが薬をのみたがらなかったり、のみ忘れたりしたときに薬掩の大切さを説明するとともに、きちんとのんでわかるかどうかを、気をつけてほしいのです。
もうひとつ、ぜひ理解してほしいのはパーキンソン病であらわれるいろいろな症状です。
パーキンソン病では、ふるえの症状が目立ち、慾者さんも気にしますが、もっと亜大なのは、筋肉がこわばる固縮と、からだの動きがつらくなり動作が円滑にできなくなる無動です。
その次にくる姿勢反射障害と歩行障害が、患者さんの毎日の生活に支障をきたしていきます。
たとえば、病気が進行すると患者さんは、定期券をとり出しながら改札口を通過する、ズボンをはきながら立つといったことができなくなっていきます。
私たちは転びそうになると反射的に手を動かして倒れないようにしますが、患者さんはそうしたことができなくなります。
そうした症状が出てくるのをなるべく先のばしにするのがパーキンソン病の治療です。
家族は、ぜひ医師の手が届きにくい患者さんの生活面での応援や配慮をしていただきたいと思います。
患将さんは動くことがもどかしくなるにつれて、からだを動かすことをやめていきがちですが、そんなときこそ家族の励ましがだいじです。
それも本人がつらい思いをしていることを察しながら、無理じいをしないでうながしてほしいのです。
たとえば、家に閉じこもりがちになったら、買い物や散歩に連れ出しましょう。
いっしょにいてくれる人がいれば患者さんの意欲も高まることでしょう。
家族には介助の負担がありますが、こうして活動的な生活を続けることこそが、将来の介護を避けられる道でもあります。
この病気では無動のために表情がとぼしくなり、声も小さく発音も聞きとりにくくなります。
やる気がないように、ときには痴呆が出たのではないかと感じられることもあります。
これも病気のせいと受けとめて、家族はなるべく積極的に話しかけてください。
応答が遅くても気長に待ってみましょう。
その一方で、手を貸しすぎるのは患者さんのためによくありません。
自分でできることを手伝ってしまうと、誰でもその心地よさを覚えて楽な方向へ逃げてしまいがちです。
また、先走って手伝い、叱姥激励するのは患者さんのプライドを傷つけることにもなりかねません。
たとえば外出するときの介助などは事故を防ぐために必要になることもありますが、家庭では事故防止策を講じながら、なるべく、いたわりすぎず、特別扱いしないことがだいじです。
できないところだけを手伝うというくらいがよいのです。
本人のペースを尊重することです。
動作が遅くてもひと呼吸おいて、患者さんの気持ちを自分におきかえ、「待ち」の姿勢で応援しましょう。
実際に行動をともにしていると、パーキンソン病のつらい症状は実感していることでしょうが、患者さんはもっともどかしく思い、恥ずかしく思っています。
その気持ちは私たち健常の者には思いおよばないものがあります。
家族は、そのことを受けとめて患者さんに対していただきたいと思います。
この病気では症状として「うっ」が出ることはほとんどありません。
病気に対する不安から気持ちが落ち込むことは少なくありません。
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